日本が湾岸戦争で多国籍軍に130億ドルを供出したが、そのほとんどがアメリカへ。終結した翌年の正月7日、当時自民党幹事長だった大沢栄二のもとに米国駐日大使アマコストが訪れる。その時アマコストが大沢に渡した“機密文書”が大沢の部屋から消えてしまう。
消えた“機密文書”には、大沢に政権をとらせることや金丸信を失脚させることなどが記されていた。その後大沢栄二は自民党を出て細川内閣成立とともにキンメーカーとして政権に多大な影響力を行使し、金丸は逮捕され、日米建設協議が再開され、アメリカの思惑通りになるのだが、“機密文書”の行方を追って秘書や家政婦が変死する――。
これは、日本政府が発注する公共事業参入を目論むアメリカが仕掛けた陰謀に翻弄されるサスペンスストーリー。
1.密談
1992年1月7日、ブッシュ米国大統領が来日した。宮沢首相は日米建設協議を活性化させることなどを内容とする「日本行動計画」をブッシュ米国大統領とともに発表した。それから1週間ほど経っていた――。
東京世田谷区奥沢に敷地500坪の土地に建つ、ひときわ目を引く大邸宅の、自動開閉式の門扉が開く。人目をしのぶように外国ナンバーの黒塗りの車が車寄せのある玄関の前に停まると、1人の外国紳士が秘書の迎えをうけて中に消えた。
政界のキーパーソンと言われ続けていて、前年4月まで自民党幹事長を務めた大沢栄二邸に、年賀の挨拶で訪れたのは駐日米国大使のアマコストだった。
大沢栄二は47歳という最年少幹事長時代の前年1月に、イラクがクウェートに侵攻した湾岸戦争への支援として、合計130億ドルを国連軍へ“供与”した。それに対するお礼と新年の挨拶を兼ねてのアマコスト米国駐日大使の訪問だった。
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2.拾った鍵
家政婦の理沙はコーヒーカップや灰皿などをお盆にのせて片付け、テーブルを拭いていると足元に鍵が落ちていることに気がついた。それを拾うや、カーディガンのポケットに入れ、キッチンで洗いものを済ませ、急いで納戸で着替えると、7時に待ち合わせをしている多田裕二の待つ池袋の「玄さん」へ直行した。
赤ちょうちんの「玄さん」には、すでに2人の若者がカウンターで焼酎を呑んでいた。
そこへ理沙がたてつけの悪い戸をきしませながら入ってきた。
「おじさん、いつになったらこの戸なおすのよ。腹ぺこん時なんか開けられやしない」
理沙はいたずらっぽく店主の片倉順平を睨む。
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3.決断 |